【会長声明】名古屋・大阪同性婚訴訟判決を受けて

投稿者: | 2025年4月15日

【会長声明】名古屋・大阪高裁同性婚訴訟判決を受けて

令和7年3月7日付で「結婚の自由をすべての人に」愛知訴訟、同月25日付で関西訴訟(以下、「同性婚訴訟」という。)の各控訴審判決(以下、各「愛知本判決」、「関西本判決」という。)が出た。
愛知本判決では、婚姻に関する民法及び戸籍法の諸規定(以下、「本件諸規定」という。)は、同性カップルが法律婚制度を利用することができないとの区別をしているものであり、「この区別は、個人の尊厳の要請に照らして合理的な配慮を欠く性的指向による法的な差別取扱いであって」、「憲法14条1項及び同24条2項に違反する」との判断を下した。
違憲とした理由として、同性カップルが法律婚制度を利用できるようにすることによって具体的な弊害が生じるとは言い難いにもかかわらず、同性カップルが、法律婚制度を利用することができないことによって、法的利益や各種の社会的利益を享受することができないという不利益を受けていること、そもそも婚姻そのものに個人の尊厳と結び付いた本質的価値があるため、法律婚制度の本質的価値を享受することができずに個人の尊厳が損なわれているという不利益を受けていること等を挙げている。特に、愛知本判決で、同性カップルが共同して子を養育する場合が一定数存在するとしたうえで、同性カップルが法律婚制度を利用できないことにより、パートナーだけでなく、養育している子の生命身体に深刻な問題が生じうると指摘したことは注目に値する。
また、関西本判決では、本件諸規定は、「性的指向が同性に向く者の個人の尊厳を著しく損なう不合理なものであり」、かつ、「婚姻制度の利用の可否について性的指向による不合理な差別をするものとして法の下の平等に反する」ものであるとして、「憲法14条1項及び同24条2項に違反する」との判断を下した。
違憲とした理由として、相互に求め合う同士が婚姻をすることができる利益は、個人の人格的生存と結びついた重要な法的利益に当たり、同性カップルがこれを享受することができないのは、同性カップルの人格的利益を著しく損なうことになること。現行の婚姻法制の婚姻は、性愛を基礎とする親族身分的人的結合関係を規定しているところ、異性カップルは婚姻をし、親族的身分関係を形成し、互いに権利と責任を負い、各種の法的効果を享受して安定した共同生活を営むことができる一方、同性カップルはこのような法的利益を享受することができず、このような区別取扱いは合理的根拠に基づくものとはいえないこと等を挙げている。関西本判決は、第一審の大阪地裁が合憲判決を下した理由をことごとく排除するものとなった。
これにより、東京二次訴訟が控訴審継続中(第一審の東京地裁で違憲判決が出ている。)であるとしても、同性婚訴訟が係属した全国5か所の高等裁判所の全てで違憲判決が下されたことになる。
他方で、愛知及び関西本判決においても、本件諸規定を違憲とする判断内容が統一されておらず、最高裁判所による統一的判断は未だ示されていない事情を踏まえ、現時点で国会議員による故意や過失があると認めるのは困難であり、国家賠償法上違憲とはいえないとして、本件控訴を棄却している。
自治体が同性カップルを公的に認める「パートナーシップ制度」は、昨年12月10日全国唯一の制度導入自治体ゼロ県であった宮城県(仙台市)で始まったことから、ようやく空白が解消されたこととなるが、税や社会保障、親権、相続など、同性・異性カップルの差は幅広い分野に及ぶ。
当協議会は、名古屋高裁及び大阪高裁の各判決の憲法14条1項及び24条2項に違反するとの判断がなされたことについて歓迎をするが、先のとおり、同性婚訴訟が係属した全国5か所の高等裁判所の全てで違憲判決が下された今、国は、判決内容を真摯に受け止め、諸規定の改正に直ちに着手すべきであると考える。
当協議会は、同性婚の法制化を求めている「Marriage For All Japan-結婚の自由をすべての人に」の賛同団体となっており、同性婚の法制化に向けてこれまで応援してきた。
司法書士法第1条(司法書士の使命)で「法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」と定められているとおり、私たち司法書士には、社会がより自由かつ公正な社会になるよう行動を起こす使命が付託されている。異性愛者であるか同性愛者であるかによって、婚姻の可否について差別的な取扱があることは到底容認できるものではなく、私たち司法書士は、この差別的取扱について是正に取り組む責務があると考える。
最高裁判決を待たず同性婚の法制化がなされるよう、当協議会としても、司法書士界への取り組みの呼びかけ、市民に対する啓発活動などを行い、引き続き応援を続けていく。

2025年4月12日

東京青年司法書士協議会
会長 本 岩 大 佑

名古屋・大阪高裁同性婚訴訟会長声明