【会長声明】東京高裁同性婚訴訟(第一次)判決を受けて

投稿者: | 2024年11月28日

東京高裁同性婚訴訟(第一次)判決を受けて

 

10月30日、「結婚の自由をすべての人に」東京第一次訴訟(以下、「同性婚訴訟」という。)の控訴審判決(以下、「本判決」という。)が出た。同性婚を認めない民法規定は、憲法14条1項及び24条2項に違反するとの判断を下し、二審で違憲と判断されるのは、本年3月14日に判決が言い渡された札幌高裁に次いで二例目となる。

同性婚訴訟は、同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の諸規定が、憲法に違反するものとし、また同性間の婚姻を認める立法を怠った国の立法不作為に対し損害賠償を求め、全国5か所の裁判所で6件の訴訟が係属しているものである。

本判決では、婚姻の目的・意義について事実を認定し、「婚姻をすることで、自らの自由意思により人生の伴侶と定めた相手との永続的な人的結合関係について配偶者としての法的身分関係の形成ができることは、安定的で充実した社会生活を送る基盤を成すものであり、個人の人格的存在と結び付いた重要な法的利益として十分に尊重されるべきもの」であるとした。そして、「性的指向が異性に向く者は、自らの自由意思により人生の伴侶と定めた相手との永続的な人的結合関係について、婚姻により配偶者としての法的身分関係が形成できるのに対し、『性的指向が同性に向く者は、これができないという区別が生じ』ており、これによって『性的指向が同性に向く者に生ずる不利益は重大なもの』」であるとした。

そのうえで、本判決は、「現行の法令が、民法及び戸籍法において男女間の婚姻について規律するにとどまり、同性間の人的結合関係について、婚姻の届出に関する民法739条に相当する配偶者としての法的身分関係の形成に係る規定を設けていないことは、個人の人格的存在と結び付いた重要な法的利益について、『合理的な根拠に基づかず』に、『性的指向により法的な差別的取扱いをする』ものであって、憲法14条1項及び24条2項に違反する」とした。また、本判決は、この区別を解消するための具体的な立法については、個人の尊重(憲法13条)と法の下の平等(憲法14条)という基本原則に立脚した制度とすべきであるという憲法上の要請があり、配偶者の地位にあることにより当然に生ずるものとされている財産的権利について、男女間の婚姻とは異なる規律とすることは、憲法14条1項違反の問題が生じ得ると指摘した。さらに、具体的な制度の在り方が国会の合理的な立法裁量に委ねられるとしても、不合理な区別を解消する立法措置をとらないことの合理的根拠となるものではないとしている。

本判決は、民法739条に相当する配偶者としての法的身分関係の形成に係る規定が設けられていないことの違憲について正面から判断し、憲法14条1項及び24条2項に違反すると認めたものであり、高く評価できる。

他方で、本判決は、国会が、同性間の人的結合関係について配偶者としての法的身分関係の形成に係る規定を設けるに至っていない(立法措置を講じない)ことは、現時点において国会にとって明白になっていたとはいえないとして、国家賠償法上違法とはいえないとし、控訴人らの請求を棄却した。

当協議会は、東京高裁の本判決の憲法14条1項及び24条2項に違反するとの判断がなされたことについて歓迎をする。そして、札幌高裁に続き、東京高裁で違憲との判断が下されたことに、国は、本判決を真摯に受け止め、諸規定の改正に直ちに着手すべきであると考える。また、期待したい。

当協議会は、同性婚の法制化を求めている「Marriage For All Japan-結婚の自由をすべての人に」の賛同団体となっており、同性婚の法制化に向けてこれまで応援してきた。

司法書士法第1条(司法書士の使命)で「法律事務の専門家として、国民の権利を擁護し、もつて自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする。」と定められているとおり、私たち司法書士には、社会がより自由かつ公正な社会になるよう行動を起こす使命が付託されている。異性愛者であるか同性愛者であるかによって、婚姻の可否について差別的な取扱があることは到底容認できるものではなく、私たち司法書士は、この差別的取扱について是正に取り組む責務があると考える。

現在、北海道訴訟は最高裁判所に上告しており、東京第一次訴訟を除くその他の訴訟はすべて高等裁判所に係属している。最高裁判決を待たず同性婚の法制化がなされるよう、当協議会としても、司法書士界への取り組みの呼びかけ、市民に対する啓発活動などを行い、引き続き応援を続けていく。

                         2024年11月27日

                         東京青年司法書士協議会

                         会長 本岩 大佑